「あまい、おいしい、しあわせ」
「いいですねえこれ」
「いいにおい」
「これ入ってる棒はシナモンですかね」
「渦まいてるねこれ」
「あーあったまる。ありがたい」
「……きれいな色だねえ」
「わたしのね、頸の中に」
「はい?」
「滅多なこと毀れないグラスが入っていて、その中にこんな色のワインが詰まってたらいいなあ」
「いい、ですかねそれ」
「頸って自分で見えないから、誰かに上手に取り出して貰えないと飲めない」
「ホラーにきこえる」
「昔は心臓を取り出しても死ななかったんでしょ? 頸を取り出しても死なないかもよ」
「違いますよ。取り出して死なないのは心臓の方」
「?」
「死んで直ぐなら心臓自体はまだ動くって話ですよ」
「ん? う? んー、そうなの?」
「首取ったら死んじゃいます」
「うん」
「取っちゃ駄目ですよ」
「取れないよ」
「……ワインの色がきれいだって話でしょう?」
「そうだよ。ふふ、おいしい」
「ええ」