「外出なかったんですか」
「ご飯は食べたよ。あれ、もう昼?」
「昼です」
「ごめん勝手に読んでた」
「構いませんけどね」
「あのねー、あれ、さけもとらのニケ」
「サモトラケのニケ」
「さもとらけ。載ってたね。あれ好き……あ、これこれ。いーなぁ」
「まあ、そうですね」
「頭取れてるのいいなあ。便利そう」
「便利?」
「ほらえっとチャンスの女神には前髪しかないっていうやつ」
「え?」
「前髪を掴まれても捕まらないように頭が取れるんでしょ?」
「いやいやいや」
「え、ニケって女神じゃん」
「勝利の女神ですよ確か」
「え、だから勝利のチャンスの女神……じゃない?」
「じゃないと思います」
「えーだって首の上無いじゃん」
「無いっていうか…無いですけど。あったのでは」
「え」
「無くなっただけでは」
「え、顔、あったの」
「そりゃ知りませんが失われたということなのでは」
「ええええええ」
「なんでそんな非難がましい」
「えーだって! これは! なくて完成でしょこれは」
「いやそういわれても」
「えええええ。えー。えー。うー……いいなあ」
「…いいならそれでいいでしょう」
「うー。うーん。でニケは何の女神なの」
「勝利」
「じゃあチャンスの女神は」
「存じませんね」
「前髪は」
「聞いたことはありますけど」
「ふーん。あとこれらふぞー結構載ってていいねえ」
「らふぞー?」
「らふぞう」
「ああ、裸婦像……どういいんです」
「いいなあって思うだけ」
「……はあ」