たぐらかす。

たぐる、ちらかす、はぐらかす。

耐性

 


 どういう訳か「食べたい」と口にしてしまった。僕はあなたを食べたいのです。
 自分の腕が女の肩や頭を固定していることがとても嬉しかった。女は絡んだ腕に動じることなく、ねえ、お腹がすいた、と呟いた。女の指先が私の着ているセーターの編み目をひっそりと掴んでいた。
「私トマトが食べたい」
なにもできない。唱えられた希望を阻んでいる我が身がじわじわと疎ましい。目頭や目蓋が形を失って崩れていく。私は仕方なく腕をほどいた。女の手を握ってハンカチのあるところまで歩いた。涙を拭って振り返ると女がこちらを見上げている。
「気が済みました」と私は言った。女が微笑んだ。
「そう。じゃあトマトを買いにいこう」
 それでその女への耐性は無くしてしまった。

 ふと気付けば突然舌の根本に蜂蜜のかたまりを投げ込まれたように喉が甘く灼ける。気道と血管がひとまとまりに心臓まで繋がって血で埋まってしまうから苦しい。心臓から腕の先まで神経が届いてぴりぴりと痺れていく。酷い目に遭わされているだけなのにその原因も解決方法も目の前のひとつしかない。どうしようもできない。だからきっといなくなってしまえば一番いいのだろうけれど、そうなるのだけは嫌でただついていくことを選んだ。ずっとがいい。ずっと一緒にいれば。どうにもならないけれど。ずっと一緒にいたい。それだけ。

最初

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3年前。

 

 

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*1:この説明をするのが結構口惜しいのですが、これまで描いてきた依頼人と被依頼人的には約3年前の絵です。実際に描かれたのは4年前です。

*2:この前にも依頼人依頼人は結構ちょこちょこ描いていたのですがこの絵がきっかけになってしまったので……ということを3年前にもはてなダイアリーにだらだら書いていた→https://neguran0.hatenadiary.jp/entry/20160426/1461601860

みみうち

*1

*2*3

 

 

 

*1:描きなおしてはみたのですが元のはこちら

http://f.hatena.ne.jp/neguran0/20190328211733

*2:マイナンバーを使う機会が増えてゆき名前を表に出しにくくなってしまったような世間(のようなつもり)

*3:追記:子どもの頃から使ってたんで……→子どものころからだったら…… に台詞なおしたものに画像差し替えました

(だれのものでもないのなら)

ひとりじめするわけにはいかないし。ずっとひとりじめしているようなものかもしれないけれど。

 


「ひとりじめすればいいのでは?」

「僕がひとりじめしたくて言ってるだけかもしれないですけど」

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「……着いたねえ」

「はは」

「ふふ、」

「いや、その、なんというか、思いの外、嬉しくて」

「私も」

 

「なんでこんなにうれしいのかわからないの」

 

 

 

*1:これはハイク終了後にhaheratterで描いた