2017-12-07 花粉 ハイクより 難燃過護 節分の前に豆を撒いて騒ぐのは、春が来ればまたふわふわと花粉が降り出して、黄色く黄色くみっちりと積もってものにまとわりついていくから。回るものが回らなくなる。壁も屋根も道も黄色く分厚くなる。 騒いで、籠る春に備える。
2017-10-11 布団の中に夢がいる ハイクより 難燃過護 「だって君いないんだもの、寒いのに」 「椅子に詰め合わせになるこたないと思いますよ」 「うん」 「うん、って」 「だから。八つ当たりだから」 「やつあたり」 「ゆめが……目が、覚めて寒かったから! ……だからぁ……だから」 上掛けからはみ出したやぶにらみの顔が、ゆっくり嫌そうにぱち、ぱちと瞬きする。 「八つ当たりだから。ごめんなさい」 「……構いませんよ」 「重かったでしょ」 「軽いですよ」
2017-08-03 細い小さな鎖 ハイクより 難燃過護 「本当は君の方が似合うと思うんだけど」 「これ、女物でしょう」 「ほら、似合う。ふふ」 「まさか僕がするんですかこれ?」 「んぅん? 折角自分で買ったんだから頑張って着けるよ? 着けてるの見たかっただけ」 (頑張ってなのか) 「君こういうの似合うよ」 もう一度指が鎖を持ち上げて、小さな金具をそっと外す。銀色の連なりが指先に引かれて肌から離れるのが、微笑んでいるのが、くすぐられているように苦い。