2017-08-03 細い小さな鎖 ハイクより 難燃過護 「本当は君の方が似合うと思うんだけど」 「これ、女物でしょう」 「ほら、似合う。ふふ」 「まさか僕がするんですかこれ?」 「んぅん? 折角自分で買ったんだから頑張って着けるよ? 着けてるの見たかっただけ」 (頑張ってなのか) 「君こういうの似合うよ」 もう一度指が鎖を持ち上げて、小さな金具をそっと外す。銀色の連なりが指先に引かれて肌から離れるのが、微笑んでいるのが、くすぐられているように苦い。
2017-07-12 寒がるひとびと ハイクより 難燃過護 「人混んでますねー」「ん、おつかれ」「いえいえ。あ、先輩、今お仲間っぽい方を見かけたんですよ、お会いしたことのない」「さっき詰所にいたのと違うの」「いぃえぇ、女性連れの……あっいた」「あーあれ……、肩車じゃん」「ああ、あの人が。どうトーテムポールなんですか?」「あのこを肩車するからトーテムポール」「えっほんとに肩車でトーテムポールなんですか」「うん」「……してないですね」「そうねー」「仕事中じゃないんですかね」「いや仕事のつもりでしょ。仕事着だもん」「手繋いでますね」「あれ恋人繋ぎしてない?」「えっほんとに仕事中なんですか……あ、行っちゃいました」「後輩ちゃん、これ飲んだらもっかい詰所戻ろっか」「え」「これは噂にしない訳にいかないわ」「先輩、楽しそうですねー」