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たぐらかす。

たぐる、ちらかす、はぐらかす。

ゆめこれくしょん みっつめ

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 気の長くなる薬を飲んだらしかった。

 どうやら自分は待ちきれなくなったのだろう。あの薬を持っていたとは知らなかった。どこに隠していたのだろう。懐かしくて羨ましいことを隠していたから、身体のどこかに薬が残っていたのか。
 それにしても迂闊に動けなくなることぐらいは覚えていただろうに。嵩の増えた睫毛や髪で視界は暗い。伸びきった腕や脚を意識するも持ち上がらない。これでは庭の草も刈れない。使った台所やら風呂やらも磨かねばなるまい。泥棒が来ても何もできない。いや、おばけ屋敷のおばけとして驚かせるだろうか。あれこれがどうでもよくなるほどだっただろうか。……だっただろうか。自分を心配して枕元に来る人はいないのに。迎えにも行けないではないか。
 申し訳なさそうにドアを開けて入ってくるのをのんびりと待っていられた。外に出られない化け物のような身体は驚くほどに気楽だった。ただただ待ち焦がれるのが心地よかったので、髪が伸びる薬といいながら、身体まるごと気も長くしてしまうのだろうと自分は勝手に納得した。
 痛々しげにこちらの身体を眺めるのも、それでも伸びた髪を梳かそうと(遊ぶ為に
右手がブラシを握っているのも、何もかもかわいらしい。効き目が峠を過ぎて日に日に身体が元へ戻っていくのをほっとした顔で見ている。その顔を見て日々ほっとするのが楽しい。ごめんね、と毎日口にされる度に、どうせならその申し訳なさをもっと小分けにして包んで、手放すまでに一生かかればいいのにと思っていた。意地の悪ささえも気長になる。
 あの時の自分が懐かしく羨ましい。あの時みたいに、あなたがいないことを穏やかに過ごしたくて、僕は薬を飲んだのか。
 狭くなった寝床の片隅が沈んだ気配に膝を折った脚が気付く。誰かがいるのかもしれない。おばけだろうか。泥棒だろうか? あなただったら。あなたが、今度は自分で薬を飲んだ僕に気付いて、その愚かさに息を飲んでいればいいのに!

 目が覚めた。気長さや伸びた身体や髪やらはどこにもなかった。

 

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レーションと徒歩

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一人なのについ被依頼人もいるつもりで買い物してしまう依頼人。

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ゆめこれくしょん ひとつめ

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彼女の背中で蝶の羽が時折ひらりひらりとゆらめく

君が助けて君を運んだつばめは僕だ 僕の筈だ

君を背中に乗せて飛べば二人きりだ

色んな虫や鳥とすれ違ったわね あなたの仲間とも
でももう羽をもらってしまったからひとりで飛べる

もぐらも僕だ

君を穴蔵に閉じ込めて閉じこめてとじこめて

君の面倒を見たねずみのおばあさんも君をさらったかえるも

あなたも背中に羽をつければいいのじゃない?
そしたら一緒に飛んでいけるのに

いやだ
誰から羽をもらった

あなたから

 

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ひとつきかんりにん

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だいじょうぶじゃない、全然大丈夫じゃない

夢に何て返事するか考えてどうする

なんて。……なんていえば。
ぜんぜんだいじょうぶじゃない。

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ひとりであるいている

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強盗に怯える男が、家を手に入れた。学習能力を持つ最新監視機能を備えているというふれこみで、警備会社と特別な契約を交わした。男は自分にしか価値はわからないと信じる蒐集物と共に暮らしていた。オートロックに設定した扉が鍵を閉める音を毎日確かめながら、男は心底安堵していた。どれだけ自分が鍵を閉め忘れても、もしわざと鍵を開けたままでいたとしても、勝手な侵入が行われることはないだろう。果たして監視機能は学習能力をフル活用し、男が心の底のそこに押し込めていた、この誇らしい蒐集物への理解を分かち合える誰かを希求する、それが強盗であっても構わない気持ちを見事に察知して、通りすがりの人間を丁寧に屋内へ招き入れることに成功した。閉まっていた鍵は音もなく開けられ、待望の客人は家の主人に会わぬまま魅入られたようにコレクションのいくつかを手に握りしめて何処かへ去り、そして鍵はまた静かに閉まった。警察は首を振り、警備会社は二度と同じ契約を交わすことはなかった。けれども家には秘密の値段が付けられて、まるで誰かが住んでいるかのように時々手が入る。

 

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あなたがひとりであるけますように

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